商社の経営者や営業をされている方の中には、顧客からISO9001や14001の取得を求められたり、今後の事業拡大、取引拡大を考えるとISOの必要を感じることが多くなっていると思います。
商社にISOって本当に必要なのでしょうか。
ISOを取得したいけれど、社内の反発や理解を得られず躊躇している会社も多くいらっしゃいます。
多くの場合、ISOへの偏見や、他社の失敗例を聞き、本当のISOを知らないまま不安や恐れを感じて、ISOを避けていらっしゃるケースがほとんどです。
商社においてISOが必要かどうか、事実を知ってからご判断いただければと思います。
今回は、商社におけるISO9001、ISO14001の考えや、ISOのイメージと実際、取得の失敗例や偏見、商社が取得のときに注意すべきことなど、商社のISOコンサルも経験豊富な現役コンサルタントがご説明します。
【商社とISO】
最近、商社をされている企業からISO取得コンサルのご依頼をよくいただくようになりました。
ひと昔前まで、ISO9001は工場を持っている製造業が取得する国際規格というイメージがありました。ISO14001の環境規格も同様にです。
しかし、最近は商社でもISO9001、ISO14001の取得を取引先(お客様)から求められることが多くあるようです。
大手企業と取引するにあたっては、商社でもISO9001は取得していて当たり前の時代になりつつあります。
【なぜ大企業はISOを要求するか】
なぜ、大手企業は、商社を含めた取引先(仕入先)に対して、ISO9001や14001の取得を要求するのでしょうか。
大手企業では商社を含めた仕入先・購買先の評価と管理を実施しています。
万が一、購買先の工場の生産停止や、仕入れた部品の不具合、リコールなどの問題が生じた場合、大手企業にとって被る損害や影響は計り知れません。
大きな問題が発生しないように、商社や仕入先メーカーを厳重にチェックする必要があります。
仕入先が商社であっても、その商社がどこの工場から製品を仕入れているか、商社が仕入れている工場まで監査に行くこともあります。
大手企業は、仕入先起因の問題が生じないように、仕入先でしっかりとした生産活動、管理活動、事業活動をしていて欲しいのです。
そこで登場するのがISOです。
ISO9001は製品(サービスを含む)が出来上がるまでのプロセスを管理する国際規格です。
ISO9001を取得している企業組織は、最低限の管理プロセスが構築され運用されている事が、審査機関・認証機関より認定されます。
大手企業としては、自ら仕入先の監査に行かなくても、ISOの審査機関が代わって管理プロセスを審査をしてくれることになります。
ISO14001も同様に、大手企業としては、環境に配慮した企業と取引きすることが昨今のスタンダードとなっています。
仕入れる製品に環境有害物が混入していたり、仕入先の生産過程であっても、そこで排出される廃棄物や汚水、排気ガスについて法令違反が発覚すれば、自社ブランドを傷つけるリスクがあります。
こちらも9001と同様に、仕入先がISO14001の認証を取得してくれれば、一定の環境管理の仕組みが構築されるていることや、法令順守について審査機関がチェックをするので、自社で監査をする必要性が小さくなります。
大手企業も取得しているISOを、仕入先や商社も取得すると、それぞれの管理水準は異なるにせよ、共通となるベースのシステムで生産活動、管理活動が実行されることになります。
大手企業と仕入先において共通の品質管理の考えが根付くわけです。
当社がISO9001のコンサルティングをした企業様から、
「ISO9001を取得したことで、今まで顧客が要求していたことの意味がわかった」
ということをよく聞きます。
【商社がISOを要求される理由】
商社の話に戻ると、なぜ最近になって商社でもISO9001を取得する企業が増えたか、それは、製造業ではISO9001が当たり前になり、品質管理の考えが根付きつつあるなか、大手と仕入先メーカーの間に入っている商社だけが、品質管理の考えが不足していることが露見し始めたからです。
その溝を埋めるべく、大手からの要求がきっかけでISO9001を取得する企業が増え、当社にも商社関係の企業からご依頼を多くいただくようになりました。
【商社でISOは大変なのか、間違いと偏見】(是非、お読みください)
商社がISO9001を取得するとなると、社内で「大変だ」「面倒だ」という声が聞こえてきそうです。
実際に、私が過去にISOコンサルティングさせていただいた商社では、どの会社でも社内からISOに対する否定的な声がありました。
ISOに対するネガティブなイメージがあるのは、これまで取引先(大手企業)から事あるごとに品質管理の要求が増え・強まり、うんざりされていることも原因かと思います。
「ISOを取得するとなると、今でも大変なのに、今以上にもっと大変になる!」
商社で働く方々、特に営業の方々は、自社がISOを取得すると聞くと、歓迎される方もいらっしゃる一方、「恐怖」が増す方も多いはずです。
「ISOを取得すると大変になる」それは間違いで、ISOを導入すると負担が増えるというのも偏見です。
一般的に、大手企業が要求する品質管理の水準は、ISO以上です。
ISO以上である顧客要求に、これまで応えてこられたのでしたら、ISOなんて怖くありません。
ISOを取得すれば、これまで顧客から品質管理について厳しく要求されていたことも「当社はISO9001を取得しています」という一言でクリアできることにもなります。
しかし、ISO取得によって負担が増えている商社もあるのは事実だと思います。それはISOの導入の仕方が悪かったことが原因で、よくある失敗例です。
ISO導入に際して、顧客やコンサルタントの言いなりとなって、大手企業と同等の高い品質管理レベルでルールを構築する企業もありますが、これは絶対にお奨めできません。
ISOに振り回されるような活動や文書作成を行う必要はありません。失敗となる元です。
【システム構築の仕方に要注意】
ISOを取得するのは大変ではありません。ISOを取得するからといって、今の仕事のやり方を変える必要はほとんどありません。
商社だからと言って品質管理を全くやっていないわけではないはずです。何らかの管理や品質向上に努めていることかと思います。
ISO9001の導入し取得するためには、商社としてどのような管理をしているか、今の仕事のやり方を明確にして、今まで通りの仕事をするだけで良いのです。
しかし、ISOでは、「あんなことをしないといけない」「こんなことをしないといけない」とこれまで顧客や仕入先の間で見聞きしたことを思って不安に感じられる方も多いと思います。
また、実際にISOが足かせになっている商社をご存知の方も多いと思います。それは、身の丈に合っていない過剰なシステムを構築したからです。
製造業であれば製造業として、商社であれば商社として自社の身の丈にあったシステム構築と運用をすることがISO導入の大切なポイントです。
[この記事を書いた人]
長谷川 順 ISOコンサルタント、株式会社ウイズダムマネジメント代表。
1975年 京都府生まれ。現在、東京と関西を拠点に全国コンサル訪問を展開中。26歳で現職の経営コンサルティング会社に転職し、2004年・29歳のときに「ISO支援ネット」事業を立ち上げ、自ら全国の企業に訪問しISOコンサルティングとISO研修を提供、継続中。わかりやすく実践的なISOを提唱。ISO9001及びISO14001審査員補(JRCA登録)。
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[動画]ISO9001取得「活動・費用の負担は?」
ISOは大変、それは古い時期に取得した企業の話。古いやり方で取得した会社は今も負担と苦労が続いています。しかし、最新のISO9001は負担なく取得できます。その最新情報を説明します。
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[動画]ISO9001取得の意味、目的、効果
正しい理解をすれば、ISO9001の負担はありません。本来、ISO導入は会社にとって負担どころか、会社が良くなるプラスの効果が働くものです。決して間違った負担のあるISOにならないように。
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