ISO9001をやめた理由(2)、厳しい審査、その対策

前回のブログで、

ISO9001をやめる企業が出ているのは主に「2つの理由」があって、

1つ目の理由は、

古いISOのやり方、つまり大企業のISOをマネして、自らが大変なISO活動にしている。

という話をしました。

参考:前回のブログ「ISO9001は必要か、ISOをやめた企業」を是非ご覧ください。

もう1つのISOをやめる理由「審査の対応と考え方」について

ISOをやめる企業が出るのは、毎年あるISO審査について、その審査対応を大変にしてしまっているから、「もうISOは辞めたい」となるのです。

ISO審査についても、審査の対応と考え方を正しく理解すれば、大きな負担にはなりません。

こちらも1つ目の原因の古いISOを維持している事と深く関係しています。

中小企業にとって、古いISO、つまり大企業型のISOを維持するのは、それだけでも色々と苦労がありますが、さらにISOは毎年、審査が実施されます。

変化しているISO審査

ISOの審査も、ISO9001規格が2000年以降に変化しているのと合わせて、柔軟な審査になりつつあります。

昔のISOの審査は

ISO規格が「あれしろ」「これしろ」と要求していることに対して、大企業レベルのことを実施しているかが、審査対象でした。

現在のISO審査は、

ISO規格が「どのようにしても自由ですよ」「自社のルールを決めて実行してください」という要求なので、

どんなルールにしていて、どのように実行しているかを確認することが審査対象となっています。(やり方やルールはそれぞれの企業が決めて良い規格になっているからです)

このことを理解すれば、審査には何にも恐れる必要はありません。

ISO審査の意味、審査は改善の機会

また、審査の意味を理解すれば、有意義な機会にもなり得ます。

しかしながら、毎年のISO審査の度に、大変な思いをされて、「ISOが嫌だ」「審査が大変」と今も審査に苦労されている会社も多いです。

はじめに、現在のISO審査の意味に触れます。

ISO9001の審査は「改善の機会」です。

審査員から修正事項(指摘)をもらい、改善の機会となるのが審査の目的です。

なので、審査では何個でも指摘をもらってOKです。

逆に指摘をもらわないと改善の機会となりません。

そして、ISO審査でもう1つ重要なことがあります。

審査で指摘をもらっても修正対応は不要

それは、審査で指摘をもらっても全ての指摘に対応して修正する必要はない、

ということです。

指摘は言い換えると、審査員個人からの提案です。

審査員も色んな個性ある審査員がいらっしゃるので、毎年の審査の度に、毎回色んな指摘(提案)が出されます。

私がコンサルしている企業には、審査の指摘で「良い指摘だと思ったことだけ修正対応してください」とお話しています。

そうしないと、毎年審査の度に審査員に振り回され、自社のためのISOであるべきはずが、年に1回しか来ない審査員のためのISOになってしまいます。

審査ではいくら指摘をもらってもOK

良い指摘だけ対応する

このように審査も柔軟に捉えることが必要です。

しかしながら、昔の権威あるISO審査のイメージを引きずっている会社では、

審査での指摘を「ダメ出し」「指摘をもらってはダメ」と考えてしまい、

指摘をもらったから、次の審査までに対応しないといけない、とISO審査に振り回されています。

これでは、ISOが負担やストレスになるのは仕方ありません。

審査は、ときどき様子を見てくれる健康診断みたいなものです。

有意義に活用すべきです。

審査を受けるにあたっての心構え、姿勢

当社がコンサルしている企業には、審査の心構えとして、

「審査前に何も準備はする必要ありません」

「いつものありのままを見てもらってください」

「指摘はいくらあってもOKです」

「指摘をもらっても納得した指摘だけに対応してください」

とお伝えしています。

健康診断の前に、慌てて減量したり、お酒を控えたりして、みたいなことをする必要は全くありません。

審査が厳しい、審査が嫌だと感じる場合の対策

もし、それでも審査が厳しくて嫌だと感じられる場合は、2つの方法をお奨めします。

1つは、審査員の嫌なところをありのまま審査機関に伝える。

審査が終了すると、審査機関向けのアンケートがあるはずです。良い審査をしてくれたと思うことの方が多いですが、審査員の中には、独りよがりの審査をする審査員がいて、不快に感じることもあります。

客観性のない審査員や独りよがりの審査員に当たった場合は、アンケートにそれこそありのまま苦情を書き込みましょう。

もう1つの方法ですが、

別の審査機関に変える

毎回の審査で、負担ばかりを強いられる指摘を出すようなことがあれば、審査機関を変更しましょう。

国内には多くの審査機関があります。

いずれの審査機関も国際ルールに従って審査をしていますが、審査機関にそれぞれの特色があります。

なので、自社と合う・合わないということが審査機関でも生じます。

弊社でも、「ISOをやめたい」と相談を受けたときに、「ISOの審査が厳しい」という場合には審査機関の変更をお奨めしています。

実際に審査が厳しくてISOをやめたいと言われていた企業で、審査機関を変更した企業は、いずれの会社も今もISOを維持されています。

審査機関の変更方法

国内には審査機関が約50社あります。

変更したい場合は、いくつかから見積りを取ることと、審査機関には営業担当者がいるので、その営業の方から話を聞きましょう。

それぞれの審査機関には特徴があるので、話を聞いて選択されると良いでしょう。

審査機関の変更方法は、新しく変える審査機関に相談されると、変更方法をアドバイスいただけるかと思います。

[この記事を書いた人]
長谷川 順  ISOコンサルタント、株式会社ウイズダムマネジメント代表。
1975年 京都府生まれ。現在、東京と関西を拠点に全国コンサル訪問を展開中。26歳で現職の経営コンサルティング会社に転職し、2004年・29歳のときに「ISO支援ネット」事業を立ち上げ、自ら全国の企業に訪問しISOコンサルティングとISO研修を提供、継続中。わかりやすく実践的なISOを提唱。ISO9001及びISO14001審査員補(JRCA登録)。

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[動画]ISO9001取得「活動・費用の負担は?」

ISOは大変、それは古い時期に取得した企業の話。古いやり方で取得した会社は今も負担と苦労が続いています。しかし、最新のISO9001は負担なく取得できます。その最新情報を説明します。


[動画]「ISO審査の話」これで審査準備はもう不要

ISOの審査が大変で「やめたい」という企業もでるくらい審査は恐ろしい?(ブログ:やめた企業)。しかし、審査の意味がわかれば、審査準備も不要で、審査の目的を理解したら全く恐くありません。


[動画]ISO9001取得の意味、目的、効果

正しい理解をすれば、ISO9001の負担はありません。本来、ISO導入は会社にとって負担どころか、会社が良くなるプラスの効果が働くものです。決して間違った負担のあるISOにならないように。



ISO支援ネット

ISO支援ネットのコンサルティング


ISO9001コンサルティング料金(人数別の料金表、社員2人~80人)


内部監査員研修

ISO9001の更新審査に立ち会いました。

支援先の企業のISO9001の更新審査に立ち会ってきました。
ISOの認証書の有効期限は3年なので、3年毎に更新審査を受けます。自動車免許の更新のような感覚ですね。更新審査は3年毎ですが、毎年定期審査(維持審査)があるので、実際には毎年審査あることになります。

更新審査と定期審査の違いですが、単純には時間が長いか短いかで、審査の内容は基本的に同じです。今回、立ち会った企業の場合、更新審査は2日間なのに対し、定期審査は1日です。審査時間が1日か2日かの違いです。
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ただ、毎年同じ審査が行われるかというと、そうでもありません。ISO9001の場合、規格の目的の1つに「継続的改善」という意図があるので、審査員は前年よりマネジメントシステムが向上しているか、去年よりは今年、今年よりは来年と段々と審査の視点が高くなっていきます。

例えば、1番最初に受ける審査では、システム運用ができる状態が最低限に整っていれば審査をパスできても、2年目以降の審査ではシステムを効果的に運用しているかという視点が徐々に審査視点に加わります。運転技術が上達していることを求められるということでしょうか。

今回、立会いをした審査でも、不適合は0件でしたが、これまでより高い視点からの指摘をいろいろいただきました。事業継続のことや、製品品質の向上などについて。審査によって課題が抽出され、これに応えることによって、企業経営の状態がステップアップする。これがISO審査の理想の姿です。

ISO取得企業の中でも審査を有効活用できていない企業がまだまだ多いようです。これは審査を行う審査機関、審査員側にも問題がないとは言えませんが、審査を受ける企業側が審査をしっかりと改善の機会と捉え、前向きに審査に向かうことで有効な審査になります。

[この記事を書いた人]
長谷川 順  ISOコンサルタント、株式会社ウイズダムマネジメント代表。
1975年 京都府生まれ12歳から東京に移り住み、26歳で経営コンサルティング会社に転職、現職。2004年・29歳のときに「ISO支援ネット」事業を立ち上げ、自ら全国の企業に訪問しISOコンサルティング、ISO研修を継続中。わかりやすく実践的なISOを提唱。ISO9001及びISO14001審査員補(JRCA登録)。

投稿日: カテゴリー 審査

ISOの定期審査に立ち会ってきました。

先日、コンサルティング先の会社でISO9001の定期監査(審査と同意語です)があり、立ち会ってきました。こちらの会社は大阪の製造業で、既にISO9001の認証を取得され、今回は何度かめの定期審査でした。

ISO9001の認証を取得すると、取得したその後も半年または1年毎(選択性)に定期審査が行われます。これを定期監査や維持審査と呼んでいるのですが、認証を取得すると、毎年、必ず審査が行われることになります。定期審査は認証取得の可否を決定する初回審査よりは審査工数(審査時間)が短いものの、審査方法は初会審査と全く同じなので、企業側にとっては審査の慣れは生じるものの緊張する場面となります。

別の企業の話になりますが、同じくISOを取得されている企業の社長が、「ISOは取得後も定期的に審査員が見に来てくれるからいいね」と仰っていました。

りっぱなしで後に何もなければ運用状態が低下することを懸念されてのお言葉でした。

私も審査が行われる度に、企業の方々に「審査は改善の機会なので、運用状態をオープンにして、仮に指摘されても、それは前向きに改善しましょう」とお話をしています。審査での指摘がゼロだと悪い気はしないのですが、せっかくお金を払って審査を受けているのですから、何か宿題をもらった方が会社のためです。

今回の定期審査では、軽微な不適合が1件と、その他の観察事項が数件ありました。こちらの会社も認証を取得後から、徐々に継続的改善がなされ運用状態が高まってきています。まだまだ向上の余地があると、社長を先頭に改善活動に取り組んでおられます。

[この記事を書いた人]
長谷川 順  ISOコンサルタント、株式会社ウイズダムマネジメント代表。
1975年 京都府生まれ12歳から東京に移り住み、26歳で経営コンサルティング会社に転職、現職。2004年・29歳のときに「ISO支援ネット」事業を立ち上げ、自ら全国の企業に訪問しISOコンサルティング、ISO研修を継続中。わかりやすく実践的なISOを提唱。ISO9001及びISO14001審査員補(JRCA登録)。

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